平成18(レ)34 損害賠償請求控訴 全文

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事件番号 平成18(レ)34 
事件名 損害賠償請求控訴 
裁判年月日 平成18年08月31日
全文 事件番号事件名裁判年月日裁判所名部結果登載年月日判示事項の要旨
:平成18年(レ)第34号:損害賠償請求控訴事件:H18.8.31:京都地方裁判所:第2民事部:原判決取消・認容::民事訴訟において相手方代理人弁護士の訴訟活動を非難し,その名誉を毀損する答弁書を提出した行為等が,訴訟活動として必要性がないことなどを理由に,不法行為に該当するとされた事例。主文
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原判決を取り消す。被控訴人は,控訴人に対し,10万円及びこれに対する平成18年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
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訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人の負担とする。この判決は,2項に限り,仮に執行することができる。事実及び理由
第1
控訴の趣旨主文同旨
第21(1)
事案の概要等事案の概要本件は,控訴人が訴訟代理人として,被控訴人を相手方として,過払金の返還を求める訴えを提起したところ,被控訴人が,不適切な表現がある答弁書を陳述擬制を求めて提出し,同答弁書が陳述したものとみなされたことによって,控訴人の名誉が侵害され,精神的苦痛を受けたとして,控訴人が,‐1‐
被控訴人に対し,不法行為に基づき,慰謝料10万円及びこれに対する本件訴状送達の日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。(2)原審は,被控訴人の答弁書の記載内容により,控訴人の外部的名誉が毀損されたとはいえず,控訴人の名誉感情は一定の限度で害されたが,金銭をもって慰謝しなければならない程度ではないとして,控訴人の請求を棄却した。これに対し,控訴人は,これを不服として,控訴した。2(1)アイ(2)ア基礎となる事実(証拠を付さない事実は,当事者間に争いがない。)当事者控訴人は,京都弁護士会所属の弁護士である。被控訴人は,貸金業等を目的とする株式会社である。事実経過控訴人は,外5名の弁護士とともに,A外1名(以下「Aら」という。)から,訴訟委任を受けて,平成17年12月28日,京都簡易裁判所に対し,被控訴人を相手方として,Aらがその夫又は父である亡BからBの財産を相続により取得したことを前提に,Bと被控訴人の間の金銭消費貸借契約に基づきBが被控訴人に対し支払った金員を利息制限法所定の利率で引き直し計算をすると,過払いが生じているとして,その過払金等の返還を求める訴え(同裁判所平成17年第10761号)を提起した(以下「別訴事件」という。甲3,弁論の全趣旨)。イ被控訴人は,平成18年2月3日ころ,京都簡易裁判所に対し,別訴事件について,平成18年2月3日付け答弁書以下本件答弁書」(「という。)を,第1回口頭弁論期日での陳述擬制を求めて,提出し,同年3月8日,同裁判所の公開法廷において,別訴事件の第1回口頭弁論が開かれ,同期日において,本件答弁書が陳述したものとみなされた(甲1,弁論の全趣旨)。‐2‐

本件答弁書には,「過払元金が1万円程度の場合であれば,訴訟提起しても,弁護士費用等がかかる為,原告本人には経済的メリットはない。にもかかわらず,訴訟提起までしてくる行為は,原告代理人(控訴人外5名の弁護士を指す。)が単に弁護士費用を稼ぎたいだけの行為であるとしか考えられず,この様な行為も権利濫用であり,信義則にも反する行為である。と記載されていた(以下「本件表現」という。甲1,弁論の全趣旨)」。
第31
当事者の主張控訴人の主張本件表現は,要するに,控訴人が依頼者であるAらの利益を無視し,専ら弁護士費用を稼ぐという自己の利益を図るために別訴事件を提起したという趣旨であって,弁護士として,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし,その使命に基づき誠実にその職務を行っている控訴人の社会的地位を貶め,その名誉を著しく毀損するものである。また,被控訴人は,別訴事件において,権利濫用の抗弁又は信義則違反の抗弁を基礎付ける事実を主張するために,本件表現を答弁書に記載しているところ,その内容は,別訴事件の原告であるAら自身ではなく,控訴人に対する憶測に基づく非難であり,別訴事件におけるAらの請求についての抗弁とはなり得ないものである。イまた,控訴人は,委任を受けて訴訟提起する場合には,これによる利益と不利益とを説明し,依頼者の意思に基づいて訴訟提起をしているところ,これは,弁護士として当然のことであり,別訴事件においても,同様であった。ウしたがって,本件表現は,別訴事件において,訴訟上主張する必要のない事実を,全くの憶測で主張するものであって,本件答弁書を提出することは,到底,正当な訴訟活動といえるものではない。
(1)ア
(2)
控訴人は,被控訴人の上記不法行為により多大な精神的苦痛を被った。こ‐3‐
れに対する慰謝料の額は,10万円を下らない。(3)よって,控訴人は,被控訴人に対し,不法行為に基づき,慰謝料10万円及びこれに対する本件訴状送達の日である平成18年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。2被控訴人の主張控訴人は,自己の理念を追求するために別訴事件を遂行したのであって,このことは,別訴事件と本件訴訟の併合審理を求めていたことや,控訴人提出の控訴理由書の記載内容等から明らかである。イ過払金の金額が少額である場合には,訴えを提起し,過払金の返還を受けたとしても,その訴えを提起した者は,依頼した弁護士に対し,訴訟費用等を支払わなければならないから,結局,訴えを提起した者には,損失が発生し,利益を得るのは弁護士だけとも考えられる。そして,このような考えが著しく社会常識に反するとは考えられないから,そのような内容を答弁書に記載し,裁判所に提出することは不法行為に該当しない。(2)第41控訴人の主張(2)は不知ないし争う。当裁判所の判断控訴人は,被控訴人が,別訴事件において,陳述擬制を求めて本件答弁書を提出し,本件陳述書が陳述したものとみなされたことをもって,控訴人の名誉が侵害されたことを理由として,被控訴人が控訴人に対し不法行為責任を負うと主張する。そこで,まず,被控訴人が,本件答弁書を提出し,それを陳述したものとみなされたことにより,控訴人の名誉が侵害されたか否かにつき検討するに,第2の2(2)のとおり,被控訴人は,別訴事件の第1回口頭弁論期日前に,陳述擬制を求めて本件答弁書を提出し,同期日に本件答弁書が陳述したものとみなされたことにより,控訴人が依頼者であるAらの利益を無視し,控訴人本人が弁護士費用を獲得することだけを目的として,Aらの代理人として別訴事件を提‐4‐
(1)ア
起したとの事実を公開法廷で摘示したものであり,その摘示した事実は,社会正義の実現等を目的とする弁護士の使命に反するものであるから,被控訴人の上記行為により,控訴人の名誉が毀損されたと認められる。ところで,被控訴人は,別訴事件の訴訟活動の一環として,本件答弁書を提出したのであるから,当該行為が訴訟活動として違法性を阻却される否かにつき,さらに検討する。民事訴訟においては,当事者間の利害が鋭く対立し,個人的感情の対立が激しくなるのが通常であり,そのため,一方の当事者の主張・立証活動において,相手方当事者その外の関係者の名誉や信用を損なう主張等がなされることがあるが,それに対し,相手方は直ちに反論等をすることができ,かつ,当該主張の当否や主張事実の存否は,事案の争点に関するものである限り,終局的には当該事件についての裁判所の裁判によって判断され,これによって,損なわれた名誉や信用を回復することが可能である。このような民事訴訟における訴訟活動の性質等に照らすと,その手続において当事者が行う主張・立証活動により,相手方等の名誉が毀損されたとしても,それが当然に不法行為を構成するものではなく,訴訟行為と関連し,訴訟遂行のために必要であり,主張方法も不当とは認められない場合には,違法性が阻却されるが,訴訟活動に名を借りて,訴訟上主張する必要のない事実を主張し,相手方等の名誉を損なう行為に及んだなど,正当な訴訟活動として許容される範囲を逸脱していると評価できる場合には,不法行為が成立するというべきである。そこで,以上を前提として,本件につき検討するに,証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によると,被控訴人は,別訴事件におけるAらの請求が権利濫用又は信義則に反することを主張するために,本件表現を用いたと認められるが,本件表現は,控訴人が別訴事件を受任した動機を非難するものであり,本件表現に摘示された事実が,Aらの上記請求が権利濫用に該当したり信義則に反することを根拠付ける事実になるとはおよそ考えられないし,被控訴人が同事実をもってAらの上記請求が権利濫用等になることを根拠付けると考えたことを正‐5‐
当化する理由も見い出し難い。したがって,被控訴人の上記主張が別訴事件の訴訟行為と関連し,訴訟遂行のために必要であったということはできないし,そのように考えたことに正当な理由もない。なお,別訴事件の提起・遂行により控訴人がAらから報酬等を受領することは当然であるものの,証拠(甲2,3)及び弁論の全趣旨によると,別訴事件を提起・遂行する目的はAらの損失の回復のためにあると認められるから,被控訴人による本件表現は真実を摘示したものとは認め難く,本件表現が違法との評価を受けることは免れない。別訴事件においてAら及び被控訴人が主張する過払金額や,控訴人が別訴事件と本件との併合審理を求めたことなども,上記認定を左右するものではない。したがって,被控訴人が別訴事件において本件答弁書を提出したことは,正当な訴訟活動として許容される範囲を逸脱しているというほかなく,違法性を阻却されない。2証拠(甲2)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,被控訴人の上記行為により精神的苦痛を受けたと認められ,上記認定の事実関係に照らすと,同精神的記苦痛に対する慰謝料の額は,10万円を下らないと認めるのが相当である。3本訴状が被控訴人に送達された日が平成18年3月1日であることは,本件記録上明らかである。4以上の次第で,控訴人の本件請求は理由があり,これを棄却した原判決は相当でなく,本件控訴は理由がある。そこで,原判決を取り消して,本件請求を認容することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法67条2項本文,61条を,仮執行宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
京都地方裁判所第2民事部
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裁判長裁判官


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